土佐金の謎 

 

 PART1  稚魚の飼育

 

尾の角度です。尾の角度が60度から90度くらいの物のみ残します。120度も有る

ような物は、必ず撥ねます。120度もあると凄くよさそうに見えますが、秋になると

泳げない金魚に成ります。素人はどうしても土佐金の反転した尾をイメージするのでこ

ういう物を残しがちですが、捨てます。所謂開きすぎです。しかし私の経験から言うと

4月頃、水温が10時頃17,8度になり始めたら、土佐金の産卵が始まります。

しかし土佐金は他の金魚の様に早朝産むとは限りません。午後から産卵すると言った

事も、私は何度も経験しています。メス魚の腹がふにゃふにゃになって居ても産まな

い時も有るし反対にとても硬くても産む時も有ります。ですから、このあたりが土佐

金は難しいと言われる所以でしょう。「いや簡単に産んだよ」と言われる方もいらっ

しゃるでしょうが、それは運がよかったと思って下さい。特に自然産卵では、受精率

の低さが(特に4月頃)気になります。せっかく産卵しても受精率は阪神のチーム打

率より低いことがたびたびです。わたしも初心者(今でもそうですが)の頃は500

0産卵、孵化が50なんてことも経験しています。

人工授精については別の項で述べますので、ここでは受精後の事を中心に書いていきた

いと思います。

 

明日のためにその1

 

産卵したらヒーターを入れて、(プラ船がBEST)メチレンブルーを入れて(水生菌を

殺す)波板を掛けて遮光します。水温は20度の設定がBESTでしょう。こうして4日

ぐらいで孵化しますから、この後泳ぎ出したらブライン シュリンプを与えます。そし

て楊枝位の太さになったら、ミジンコに切り替えます。このあとストロー位の太さにな

ったら、ここから出来れば(入手出来れば)秋まで糸ミミズを与えます。人工飼料は確

かにシュリンプ以降代替で与えても構いませんが、「土佐金を創る」と言うことを目指す

なら、やはりミジンコと糸ミミズは外せません。

 

明日のためにその2

 

次に丸鉢について、少々書きます。高知では当歳魚を育てるには、丸鉢が常識です。い

わゆる定番です。これに代わる物として60CMのプランターが有ります。十分代用は

ききます。この丸鉢に稚魚を入れるのは孵化して3週間後位からです。もちろん丸鉢で

孵化させても構わないのですが、水変えとかで非常に苦心するので初心者のうちはプラ

船から丸鉢へ、と言うパターンをお勧めします。この時、丸鉢に移した後はヒーターは

使えませんので、夜間は波板を掛けるなどして15℃以下に水温を下げないように、注

意が必要です。もしウロコが生える前に10度位の水温に稚魚を晒すと、ほぼ泳げなく

なります。

ではこの次の項から選別の方法について述べます。

 

明日のためにその3

 

 孵化後1週間か10日後位から、選別を始めます。最初の選別ではフナ尾と尾形の左右不揃いな物を、撥ねます。この時に3割も残らないようであれば、この腹は外れと言うことで、私の場合は全部流します。

約1週間後、次の選別をします。この時はかなり撥ねる対象が多くなります。まず、尾芯のつまみ、これは白い洗面器に入れて黒く太い尾芯がとおっている物が、つまみです。出る時はむちゃくちゃに出ます。次も出る時はむちゃくちゃ出る片腹。左右の腹形が違う(1方が丸、1方が角とか)物を除きます。この片腹の選別の時は、ミジンコを与えた後にやると良くわかるのでお勧めします。糸ミミズをやった後だと、片腹に1時的になりやすいので、避けた方が無難です。そして、この時の選別で1番重要なのが、この開きすぎが多く出て、僅かに残った物から良魚が出る事も多く、品評会魚もでる事が多かったと思います。

この1週間後、3度目の選別をします。ここからは前2回の繰り返しです。前回見落とした物を撥ねて行きます。そして私の場合この時プラ船から丸鉢に60尾前後を入れて飼育して行きます。

 

  明日のためにその4

 

この頃から、魚体にウロコが生え初めてきます。そして気が付くと、晴れた日の夕方群れをなして鉢の縁をぐるぐると回る稚魚の姿を見る事になります。これが丸鉢の法則です。この土佐金の不思議な習性によって土佐金の尾の基本となる親骨が造られます。この時120度も尾の角度が有るような物は、群れについていく事が出来ません。当然撥ねますが、秋口に入るとそういうものが品評会候補魚になります。とに角泳げない物は、品評会魚にも種魚にも成りませんので、どんどん捨ててください。土佐金の場合所謂「好転」はまずありません。見切ることが上達の近道です。

こうして1週間ごとに2,3割ずつカットして行くと、60>45>35>25>15>12>10>8>6>5>4>と10月には1鉢3尾になりますので、ここで選別終了と言う事になります。

 

  明日のためにその5

 

ところで、上記以外にも土佐金は数々の欠点が夏場以降秋口に掛けて、出てきます。まず、鰓めくれ。水温の上昇する8月に特に多く出てきます。少しでも捲れているのを発見したら、幼児用のカーブした爪切りバサミで、カットしてやります。しかし鰓の薄皮の部分ならば元どおり生えてきますが、硬い鰓本体が捲れた場合直りません。あきらめるか、捨てるしかありません。別に鰓捲れは当歳魚にかぎった事ではなく、2歳でも親魚でも真夏に日よけを忘れれば、鰓は開きぱなしになります。飼育者の責任です。

次に尾芯飛びです。これもこの時期良く見られます。この場合飛んでしまった部分を2,3ミリ手前から鋏で切るのですが、元通り生えてくる場合とそうでない場合があります。私の場合は繰り返しますが、何度もやるとたとえ生えてきても、尾芯は回数ごとに細くなっていきます。

そして桜尾ですが、会(愛好会)の中にはこれを容認している所もあるようですが、私は、これも欠点と考えています。桜尾は皺(次に述べます)が出ないと言う事ではよいのかも知れませんが、やはり土佐金の尾は三尾であり、程度によるとは思いますが、桜尾は評価が下がります。これも直し方としては、尾芯飛び同様手前2,3ミリの所を鋏で切ります。これも三尾になる場合とやはり桜尾のままと言う2通りがあり、どちらかと言えば後者のケースが多いと思います。

最後に皺です。これが土佐金の最大の欠点と言えます。他には何の欠点も無い金魚でも、皺があればその魚は品評会に出ても上位入賞はおろか、殆ど評価なしです。このあたりが土佐金はむずかしいと言う事にもなる訳ですが。

皺抜きは竹串などを使い、皺の入っている部分を金座の後ろから切り取る訳ですが、初心者には勧められない難しい手術です。また、退色した金魚にこれを行うと、そこだけ白くなり、見苦しくなります。いずれにしても上級者にお願いした方がよいと考えます。

1つ、付け加えるなら、尾の曲がりです。秋口になると反転が出来てくるので、水の抵抗により、尾の曲がりが出てくる魚が現れます。これは残念ながら現代の医学では直し様の無い、不可抗力です。諦めるしかありません。

つまり夏以降は土佐金は欠点が出まくりで、この時期の土佐金はまさに

  

  明日はどっちだ

産卵について

 

 種親の選び方

 

 種親は、基本的には、3歳以上のものを使用するのが一般の金魚の基本だが、土佐金は明2歳を使用して採る場合が意外と多い。私もその一人である。勿論親魚を、使用するのが一番いいのだが、土佐金は色々と難しい要素があり、必ずしも親魚が産卵期にどんどん産卵するとは限らない。そこで春発情の早い、明2歳を使用して取るという事になる。

この場合出来れば、退色していない黒いオスメスを使用して、卵を採りたい。土佐金を飼育する上で、退色してないものの方が、体形がいい物が多いのは間違いないことで有り、これを無視する事はできない。確かに退色したもの同士を掛け合わせれば、退色が早い物が出てくるし、それは個人の採りかたは自由なので、否定はしないが私はあくまで、退色していない物に重きをおく。

特に重宝がられる更紗は白い親を使用すれば必ず出るし、見た目で言えば更紗が一番きれいなのは間違いない。しかし更紗は、体形、尾ともにイマイチなものの確率がかなり高く、こういうことで、私は勧めたくない理由である。

但し、4歳以上で黒い親を使用すると、非常に退色が遅い物の確率も高くなるのでこれは避けた方がいいだろう。

 

 

  産卵方法

 

 産卵のさせ方は2種類有ります。自然産卵と、人工授精です。どちらも更水にメス1に対してオス3を入れてプラ船で泳がせます。ですから確率を求めるならば、2対6とか3対8とかにして、(但し追星とかでよくオスメスを確認して入れる)大潮の前々日とか、午前中に雨とか、蒸し暑く成りそうな時とかを選んで設定します。

 午前中1尾を(メス)追ってる状況があれば、自然産卵ならば布袋草を入れそれに産み付けさせますが、とに角自然産卵は金魚が消耗しますし、それが元で病気あるいは死に至ると言う事も少なくありません。しかも土佐金の命である親骨を折ったりもします。

 そこでやはり人工授精と言う事になるわけです。ここから先は秘伝ですので人には喋り捲ってください。

 まず、飼育容器の水よりも1度くらい高い更水を洗面器に三杯用意します。そして、ネット、これが肝心なのですが、私の場合三角コーナー水切り袋NEWごみっこポイ(製造発売元、ネクスタ(株)限定で使用してます。ほかのネットは感心しません。

 でネットを洗面器の底にひろげ、オスメスを他の2つの洗面器に入れ、それぞれ、精子と卵が出るか、ゆるく肛門の脇をこすって確認します。ともにすっと出るようであれば、すぐに合わせて人工授精に入ります。ここでポイントは利き腕の方にメスを持つという事です。つまり肛門どうしを合わせるのですが、僅かにオスの肛門の位置を下げそして精子を絞ります(柔らかく)、そして精子を出すの目で確認したら素早く卵を出します。つまりオスの精子の出具合によってたまごをコントロールすると言う事です。

 オスの精子がでが悪くなるようであれば、つぎのオスを使用します。人工授精の場合3,4びはオスが必要です。これをローテーションで使って行きます。

 受精は精子は1分以内に卵に入れないと未受精卵になります。もっと言えば人工授精の場合はとに角ほぼ同時に精子と卵を効率よく出す事が、100%近い受精につながります。

 この後孵化槽に入れネットをさかさまにしてよく泡を取って沈め、その上に亀甲金網をかぶせて浮き上がらないようにして、メチレンブルーを青くなるまで溶かして、その上に波板を被せて遮光します。こうすれば未受精卵が水生菌に冒されることは有りません。また最低水温が15度を割るようならば20度にヒーターを設定して入れてやれば4日で孵化するので理想的と言えます。(私が言ってるだけですが)。

 とに角ヒーターで飼育する事は水が痛みやすい、しかし稚魚のうちは水替えが容易ではないと言う事を考えれば5月中旬以降に採ればヒーター要らずで理想的です(私の場合)。